2022年、大ヒットした”きつねダンス”
北海道日本ハムファイターズのチアガールによるダンスパフォーマンスが、プロ野球の枠を超え、一大ムーブメントを引き起こしました。
この記事では、きつねダンスのルーツと、なぜ流行ったのかについて紹介していきます。
きつねダンスの誕生秘話
きつねダンスが初めて披露されたのは、2022年の札幌ドーム3戦目となる3月31日でした。
BIGBOSS率いるチームを盛り上げようと、青いコスチュームに身を包んだファイターズガールが、元気いっぱい踊り始めました。
このダンスを提案したのは、ファイターズガールのディレクターである尾暮沙織さんです。
かつて尾暮さん自身もファイターズガールとして活動し、その後は裏方として彼女たちを支える、お母さん的存在でもあります。
尾暮さんは2020年にこのダンスの原曲であるイルヴィスの『The Fox』をYouTubeで発見。
この楽曲は「きつねはなんて鳴くんだ?」と歌いながらさまざまな動物の鳴き声を繰り返し、くせになるリズムとフレーズが評判です。
2013年に世界的大ヒットとなり、ミュージックビデオは10億回以上も再生されています。
尾暮さんは球団マスコットのフレップがきつねをモチーフにしたキャラクターであることから、「これは面白い、いつか使いたいな」と、この曲によるダンス企画をあたためていました。
そして2022年に新庄剛志氏が監督に就任したことでチャンスが訪れます。
球場の演出が一新されるタイミングで、尾暮さんはきつねダンスの導入を提案。ついに温めていた構想が実現したのです。
ところが、ダンスを実行すると決まったのは本番の1週間前。曲の編集・振り付けは急いで進められ、原曲のミュージックビデオに登場するきつねをイメージしたダンスをベースにしながらも、親しみやすさやあざとさを加えました。
しかし、きつねダンスの初披露は散々なものでした。
これまでのファイターズガールのダンスパフォーマンスには使われてこなかったコメディータッチの楽曲に、観客もどう反応すればいいのかわからなかったのかもしれません。
その思いはダンスを披露するファイターズガールも同じでした。
キャプテンの濱野亜里紗さんは最初に曲を聞いたときに「この曲で踊るの?!」と驚いたそうです。
今までのダンスにはないコミカルな曲調とかなり個性的な振り付けに、ファンに受け入れてもらえるか不安を抱いたといいます。
きつねダンスの開幕戦は、ファイターズガールたちの不安が的中する結果となってしまいました。
キャプテンの濱野さんは「あまりの反応のなさに『これから大丈夫かな』と不安になった」といいます。
しかしその後、きつねダンスの大逆転劇が始まっていくのです。
きつねダンス大ヒット
きつねダンス初披露から一カ月が過ぎたころ、札幌ドームのスタンドに変化が起こります。
少しずつ、ファンがきつねダンスを一緒に踊ってくれるようになったのです。
そのきっかけとなったのは、きつねダンスをベンチで見ていた選手たちでした。
ファイターズガールに触発されたかのようにダンスを踊りはじめる選手たちの姿を、テレビ中継のカメラがキャッチ。
YouTubeなどの動画サイトにその姿が投稿され、ファンの間できつねダンスが一気に広まったのです。
きつねダンスを踊ったのは、日本ハムの選手だけではありません。
当時ソフトバンクに所属していた松田宣浩選手など、札幌ドームを訪れた他球団の選手も踊ってくれたのです。
徐々にきつねダンスへの注目が高まる中、日本ハムの選手たちがきつねダンスを踊る動画がパ・リーグTVを始めとするYouTubeで公開されると、人気が爆発。
清宮幸太郎選手をはじめ、日本ハムの将来を担う若手有望株もダンス動画に参加。
チームのムードメーカーだった杉谷拳士選手が、キレキレのオリジナルきつねダンスを披露するなど、大いに盛り上がりました。
この和気あいあいとした雰囲気は、視聴者にも伝染。
試合中の真剣な表情とは違う選手たちの姿が見られると評判で、「中毒性が増す」と、あっという間に100万回再生を突破しました。
さらに、ファイターズガールがつけている、きつねの耳のカチューシャにも注目が集まり、一時ネットショップで完売になるほどの過熱ぶりをみせました。
2022年のオールスターゲームでも、日本ハムの選手たちが持ち込んだカチューシャを、他球団の選手たちがうれしそうに装着する姿が見られました。
さらに7月16日の西武戦からは、ファイターズガールにきつねの尻尾が追加され、キュートさがアップ。ネット上でも絶賛コメントが相次ぎました。
きつねダンスの魅力は耳に残る楽曲や、ゆらゆらとした特徴的な振り付けだけでなく、ファイターズガールの笑顔にあります。
最初はあまりのウケの悪さに、不安もよぎったきつねダンスですが、ファイターズガールのスマイルがその空気を少しずつ変えていきました。
いまや日本中で大フィーバーを巻き起こしている、日本ハムの名物ダンス。
2022年のオールスターゲームでは、パ・リーグ6球団のチアガールが、きつねダンスを披露する場面もありました。
さらに北海道出身の人気タレント・大泉洋氏がドラマの中できつねダンスを踊るなど、プロ野球の枠を超えるムーブメントとなりました。
2023年に北広島市に誕生する新球場、エスコンフィールド北海道の開場に向け、新庄剛志氏を監督に招いた2022年の日本ハム。
その戦いは序盤から連敗続きで、厳しい戦いが続いています。
それでもBIGBOSSのもとで清宮幸太郎選手、万波中正選手、野村佑希選手といった、若き才能が開花しつつあります。
今シーズンは厳しい戦いが続きますが、新球場を舞台に優勝まで駆け上がる準備は着実に進んでいます。
そうしたチームを支えるファンを増やし、球場に行く楽しさを提供するという意味では、
ファイターズガールによるきつねダンスが果たす役割は、非常に大きいものといえるのではないでしょうか。
連日のようにテレビやネットでダンスが注目されることで、チーム自体の注目度も高まっています。
かつて北海道に日本ハムが移転してきた時、北海道のプロ野球ファンのうち、多数を占めていたのは巨人ファンでした。
そんなアウェーの中に飛び込んできた日本ハムに新庄選手が入団し、北海道のプロ野球ファンを変えました。
新庄選手を見るために札幌ドームを訪れる人が増え、自然と日本ハムのファンになっていったのです。
新庄選手自身もさまざまなパフォーマンスの狙いは、「自分を見に来たお客さんが、他の選手のファンになって帰ってくれること」と話し、客寄せパンダもいとわない覚悟で
日本ハムを北海道に定着させました。
きつねダンスは、選手時代の新庄氏がそうであったように、ファンが球場に来る喜びと楽しさを提供してくれています。
新庄監督も現状のチーム成績に満足などしているはずがありません。
一人でも多くの選手を成長させ、逆襲のチャンスをじっと狙っているはずです。
今後、きつねダンスと共に、日本ハムがパ・リーグをさらに面白く演出してくれるかもしれません。
現役時代から数々の奇跡を起こしてきた新庄監督。
きつねダンスという追い風を得た日本ハムの快進撃に期待したいですね。
コメント